知っておくべき医薬品用語 -熱分析-

医薬品が品質基準に準拠していることを確認する場合、熱分析が潜在的な問題の特定に役立つ4つの領域があります。以下のような特性を確認することで、API(医薬品有効成分)および製剤添加剤に関する重要な情報です。以下で説明するように、それらは2つの熱分析法によって調査できます。

・熱安定性
・適合性
・結晶多形
・擬似結晶多形

 

熱安定性

ASTM E2550では、材料の熱安定性を「材料が分解または反応し始める温度」と定義しています。この特定の温度の決定は、熱重量分析と呼ばれる熱分析法を使用して行うことが指定されています。

 

適合性

薬は通常、有効成分のみではなく、有効成分とは異なる製剤添加剤との混合物として構成されています。例えば、錠剤では、賦形剤は最終製品の外観や味の改善し、崩壊剤は濡れた直後に溶解するのを助けるなど、さまざまなはたらきを担っています。
なかでも賦形剤はそのほとんどが薬理学的に不活性です。ただし、有効成分と賦形剤の間の物理的および化学的相互作用は、薬物の安定性や安全性、および治療効果に影響を与える可能性があります。この場合、薬物と賦形剤の「非互換性」という用語が使用されます。一方で、賦形剤が有効成分に影響を与えない場合、両物質には適合性が認められます。
有効成分と賦形剤の適合性に関する最初の情報は、次の方法で取得されます。

・示差走査熱量測定(DSC)
・熱重量測定 (TGA)

 

結晶多形

結晶多形とは、固体材料が異なる結晶構造を形成する能力です。
結晶構造の異なる修飾は同じ化学構造を持ちますが、次のような物理的性質が異なります。

・溶解度
・融点
・吸湿性
・密度
・比熱容量

これは、原薬の加工性と次のような製剤の性能に影響します。

・安定性
・生体内への取り込み
・溶出速度
・バイオアベイラビリティ

同じ理由で、結晶多形を調べることは食品や化粧品においても重要です。示差走査熱量測定(DSC)を使用して、さまざまな結晶多形を特徴付けることができます。

 

擬似結晶多形

擬似結晶多形は、水和または溶媒和により異なる修飾が生じる特定の形態の多形です。
溶媒和物では、溶媒分子は物質の結晶構造に閉じ込められています。これが3つ以上の溶媒を含む場合、ヘテロ溶媒和物と呼ばれます。水和物では、薬物に関連する溶媒は水です。
溶媒和物と水和物の特性評価は、主に熱重量分析と、発生ガス分析との組み合わせで行われます。 TGA測定では、サンプル中に存在する溶媒/水の量、したがって溶媒和/水和の程度に関する情報が得られます。発生ガス分析により、加熱中に放出される溶媒を特定できます。

 

 

4 Frequently Used Pharmaceutical Terms You Should Know

この記事はNETZSCH Thermal Analysis Blogを翻訳・一部改変したものを掲載しています。

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