ジャッカルの日
往年のアメリカ映画に「ジャッカルの日」というのがあります。
フランスのドゴール大統領の暗殺を企む謎のスナイパー「ジャッカル」と、フランス警察の息をのむサスペンスなのですが、記憶に残る名シーンに、「ジャッカル」が傷病軍人に偽装し、松葉づえに狙撃銃を仕込んで警戒線を突破するというのがありました。
映画の中では、暗殺があわや成功すると思いきや、寸前でフランス警察に踏み込まれ、先頭の警官は撃ったものの、次発装填している間に射殺されてしまったのでした。子供心に、この銃は連発じゃなかったのか、連発だったらどうなっていたのだろう、と思いました。ゴルゴ13が、本来狙撃に向いていない自動小銃アーマライトM16を改造して使用しているのは、この映画を見ていたからに違いないと思います。
それ以来、松葉づえを見ると、この映画のことを連想します。
きわめて、長々と前振りさせて頂きましたが、何を隠そうこの私も、先々週より生れて初めて松葉づえのやっかいになってしまいました。受傷了!全治2ヶ月の「肉離れ」なのですが、何となく格好悪いので、「ヒフク筋の断裂」と申しております。
ドイツのミーティングから帰ってきた翌日で、長時間のエコノミークラスで、足の筋肉が固くなっていたのかもしれません。
病院から松葉づえをいつまでも借りているのも何ですので、マイ松葉づえを通販で購入したのですが、とにかく、会社に来るだけで一苦労です。弊社の新子安のラボにおいで頂いた方はご存知だと思いますが、とにかくUP DOWNが激しいのです。片道1時間半がどう頑張っても2時間かかります。せっかくエレベーターの所にたどり着いても、どう考えても階段で行けるでしょう、という方々が一杯で、使えない事も多々あります。JRでは良く席を譲ってもらえるのですが、有楽町線など皆疲れているのか、優先席の前に松葉づえで立っていても、まず席は譲ってもらえないことがほとんどです。なお、弊社の最寄り駅は新子安ですが、タクシーで行く場合は「東神奈川」の方が便利なのに気づきました。(豆知識です。)
一時なりと、不自由な方の目線で物を見る機会が得られたというのは貴重な経験だと思いました。
ともあれ、「受領は倒るるところに土をも掴め」と申します。
せっかくの機会ですので、松葉つえを用いた最適最速の歩行、を模索中です。最適、の意味は、最も疲れない、省エネルギーの意味です。社員の迷惑を顧みず、行ったり来たりして施行した結論としては以下の通りです。杖を前方に差し出すときできるだけ水平に(もちろん障害物には注意して)、地面にすれすれに大きく差し出す、そこを支点として体を前に移動するのですが、ほぼ前に倒れるように動き、そこですかさず、杖を再び前に出す、という一連の動作がもっとも効率的、というものです。
やってみて連想したのは、(ジンギスカン時代の)モンゴル軍の騎馬の走法です。なるべく上下動を抑えるので、人馬の疲労が抑えられ、一日の移動可能距離が大幅に増えるのです。何ごとも、目標に到達するために最適なプロセスの探求というのは極めて重要です。
プロセスと言えば、ネッチ社の中で最近急速に売り上げが伸びているものの中に、“プロセス解析”という分野があります。
その中で特に有用視されているのが、誘電分析(DEA)というものがあります。これは一言でいうと硬化(キュア)モニターで、エポキシなど熱硬化性樹脂の硬化挙動を硬化終端まで定性的に計測できるものです。
原理を簡単に申しますと、くし形電極が互いに差し込まれるような形で近接して、キャパシターを形成しているとします。電極間に一定周波数のAC電圧を加え、応答として振幅と位相情報をもったAC電流が計測されます。硬化に伴って、樹脂の中の双極子モーメントやイオンが動きにくくなるのですが、これが計測される複素誘電率に反映されます。その逆数をイオン粘度と呼んでいるのですが、これがレオメーターなどで測定される粘度の硬化挙動と“定性的に”一致します。ただし、レオメーターの場合は、ゲル化点を越えては測定できないのですが、DEAでは硬化終端まで硬化挙動を追えるメリットがあるのです。それに金型にセンサーを組み込んでin situ で計測できるのが魅力です。
ドイツの本社の方では圧力センサーで有名な、Kistler 社とコラボして、圧力センサーで金型が充填されたのを見ると同時に、DEAセンサーで効果の良・不良をリアルタイムでモニターする、ということをやっているようです。さらに、この測定結果をKinetics Software で解析するサービスを行い、最小の投入エネルギー、最短の時間で、目標とする品質の製品を製造するプロセスのアドバイスするコンサル業務が新しいビジネスとなっているのです。日本でも年内上陸する予定ですので、乞うご期待、です。
さて、本年は占いでは地震の頻発する年だとも申します。
めったに無い怪我をして、とっさの地震で同じように怪我をしても、自身もしくは周囲の人に応急処置などできるよう、普段から心がけようと思う今日この頃でした。