NanoTR/PicoTRパルス光加熱サーモリフレクタンス法熱拡散率測定装置
ナノメートルオーダーの薄膜の熱物性が測定可能な唯一の装置
特徴
- 厚さ数十nm~数十μmの薄膜の熱拡散率や熱浸透率、界面熱抵抗を測定することが可能
- 裏面加熱/表面測温方式(RF方式)と表面加熱/表面測温方式(FF方式)の両方式を搭載しており、基板の種類を問わず測定することが可能
- (独)産業技術総合研究所が国家標準として供給している熱拡散時間標準薄膜(RM1301-a)により検証された、SIトレーサブルな装置
- JIS R 1689 「ファインセラミックス薄膜の熱拡散率の測定方法ーパルス光加熱サーモリフレクタンス法」、JIS R 1690 「ファインセラミックス薄膜と金属薄膜との界面熱抵抗の測定方法」に準拠
測定範囲

原理
パルス光加熱サーモリフレクタンス法は、基板上に形成された薄膜試料をパルスレーザーで瞬間的に加熱し、薄膜内部への熱拡散による表面温度の低下速度あるいは裏面温度の上昇速度を測定することにより、薄膜の膜厚方向の熱拡散率または熱浸透率を求める計測技術です。
レーザーフラッシュ法を超高速化した、パルス光加熱サーモリフレクタンス法によって世界で初めて薄膜の熱拡散率、熱伝導率の測定が可能になりました。


仕様
※表は横にスクロールできます。
型式 | NanoTR | PicoTR |
---|---|---|
温度範囲 | RT ~ 300 ℃ | -100 ~ 500℃ |
パルス幅/波長/ビーム径 | 1 ns / 1550 nm / 100 µm | 0.5 ps / 1550 nm / 45 µm |
測定膜厚方法 | 樹脂:30 nm ~ 2 µm セラミックス:300 nm ~ 5 µm 金属:1 ~ 20 µm |
樹脂:10 ~ 100 nm セラミックス:10 ~ 300 nm 金属:100 ~ 900 nm |
測定項目 | 熱拡散率/熱浸透率/熱伝導率/界面熱抵抗 |
アプリケーション
データ
TiNの熱拡散率の温度履歴曲線
図は、NanoTRのRF方式にて測定した、膜厚の異なるTiN薄膜の温度履歴曲線になります。(赤:200 nm, 緑:400 nm, 青:600 nm)
膜裏面を加熱パルス光により加熱し、膜表面の温度上昇を測定しており、横軸は加熱パルス光を照射してからの経過時間です。膜厚が厚くなるほど、温度がゆっくりと上昇していく様子が観察されています。
有機EL薄膜の温度履歴曲線
図は、有機ELを構成する薄膜材料をNanoTRのRF方式にて測定した結果です。
有機EL薄膜は透明なため、両側にAl薄膜を成膜し三層膜構造にして測定します。三層膜全体の温度履歴曲線から三層膜解析を行い、有機EL薄膜の熱拡散率を算出します。
ZnO薄膜の温度履歴曲線
図は、ZrO2基板上のZnO薄膜をPicoTRのFF方式にて測定した結果になります。
四種類の試料の表面にはMo膜が100 nm 成膜されており、加熱直後の鋭いピークはMo薄膜内への熱拡散による表面温度の低下で、四試料ともに同様の変化を示します。加熱後、およそ1 ns 経過すると熱は第二層との界面まで拡散し、第二層の熱浸透率の違いにより表面温度の低下速度が異なってきます。