自動車用熱可塑プラスチックの一般的な欠陥原因

射出成型熱可塑プラスチック部品の欠陥は、広い範囲の成型品で現れます。選択された材料や部品及びコンポーネントの製造プロセスが、この問題の原因であることがよくあります。欠陥部品が製造機械から出される場合には必ず、製造プロセス、材料や設計の再調整や長期間のコストを回避するために、その欠陥の根底にある原因を見つけ出すことが重要になります。ほとんどの熱可塑プラスチックの欠陥は、熱分析装置によって解析することができます。我々は、二つの共通した熱可塑プラスチックスの欠陥を選択し、熱分析が、どのように欠陥の原因解析の役に立てるかを示します。

ケース1:低温でのラジオカバーの破損

自動車のダッシュボードに組み込まれているラジオカバーが、未知の原因で破損しました。一つには、製造された材料が他の物質で汚染されていた、或いは、破損した部品の製造に間違ったポリマー組成が使われた可能性が考えられます。そこで、最初のステップとして、DSC 214 Polyma が欠陥原因を見つけるために使われました。この測定法は、比較的容易に材料特性への多くの洞察を与えることから、欠陥原因の最初の評価には特に適しています。
良品と不良部品からの両方の試料は、N2雰囲気中、10 K/minの加熱速度での温度プログラムにさらされました。Fig.1は、その測定結果を示しています。室温以上では、二つの試料は同じ挙動を示しています。ガラス転移温度と融解ピークは、同じ温度で起こっています。しかし、良品試料は、不良品試料では見られない約-58 ℃での二番目のガラス転移を示しています。良品のこの二番目のガラス転移は、低温柔軟性や衝撃強度を改善させるエラストマー組成に突き当たります。
不良部品の試料におけるこの組成の欠如によって、このラジオカバーは、低温柔軟性を失い、結果的に、低温で破損することになっています。


Fig.1:良品及び不良品試料のDSC測定
Fig.1:良品及び不良品試料のDSC測定

 

この測定例は、熱可塑プラスチック部品の欠陥解析における示差走査熱量測定の多くの応用例の一つです。

ケース2:応力下での熱可塑プラスチック部品の破損

ポリマーでは、激しい物質転移が起こりえます。ガス、有機溶媒、着色剤や水分もポリマー内に拡散或いは透過することがあります。しかしながら、吸水は、ポリマー特性を変化させます。これには、弾性変形への抵抗力である弾性率の様なポリマーの機械特性も含まれます。
応力下での熱可塑プラスチック部品の欠陥も、材料内への水分の取り込みに関係している可能性があります。湿度発生器を装備した動的粘弾性測定装置が、異なる湿度レベルでの機械特性解析の助けとなります。Fig.2では、ポリアミド6(PA)試料が、引張モードで1 Hzの周波数、温度40 ℃で測定されました。相対湿度は、時間軸で段階的に、0 %から75 %まで増加されました。この材料の剛性(貯蔵弾性率 E‘で表示)が、各相対湿度で測定されました。材料の剛性は、相対湿度の増加に伴い減少していることが明瞭に観察されています。50 %の相対湿度で、貯蔵弾性率は、約74 %減少しています。


Fig.2:引張りモードでのPA 6試料のDMA測定
Fig.2:引張りモードでのPA 6試料のDMA測定

 

この測定例は、自動車や異なる気候における使用条件下でのポリマーの機械特性を知ることの重要性を示しています。従って、この条件に耐えうる自動車部品やコンポーネントでの熱可塑プラスチック材料を使用することが極めて重要です。

この二つの熱可塑プラスチック材料の一般的な欠陥原因の測定例は、熱分析法及び装置が、欠陥原因の解析に役立つことを示しています。

 

 

Common Causes of Failure of Automotive Thermoplastics



この記事はNETZSCH Thermal Analysis Blogを翻訳・一部改変したものを掲載しています。

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